住まい
北海道の住まいづくりガイド⑥ 工事を図面通り行わせる工事監理者を理解

・工事管理者や現場監督と何が違うの?
・それを知ってなんになるの?
ここでは、住宅建築に必ず関与することになっている工事監理者について学んでいきたいと思います。(公開日:2018年8月1日)

工事監理者とは

 

みなさんは、なんとなく現場をとりしまってくれてる人のような印象をお持ちだと思いますが、実は多くの方がこの工事監理者について詳しくしらないまま家づくりをしているのが実態です。

ですが、実際のところ、それを全く知らなくても家づくりは自然と進み、それで世の中、概ねうまくいっているというのも事実です。

しかし、結果論ですが、やはりこの工事監理者のことをあらかじめ詳しく知っておくべきだったと考えられる方が少数ですがいらっしゃいます。

その理由は、ある方にとっては、この知識の有無が、工事の発注方式や発注相手の選択という初期の重要な意思決定を大きく左右するからです。

この後戻りできない決断で後悔を残さないよう、やはり、工事監理者の基本については最低限理解しておくことをお勧めします。

まずは、工事監理者についての説明の前に、似たような用語との違いについて、かんたんに説明します。

 

■工事管理者や現場監督との違い

工事管理者とは、一般的に工事施工会社の現場代理人をいい、工事の材料、下請け会社・職人などの手配や、工程の段取り・調整、施工確認といった工事の全般を取り仕切る者をいいます。

一方、現場監督工事監督という言葉がありますが、上の工事管理者をさす場合と、発注者の代理人として契約履行を確認する立場の者を指す場合があり、「現場で上に立って、指図・取締まりを行う者」という広い意味で用いられます。

 

■工事監理者とは?

一方、工事監理者は、上の工事管理者と異なり、その用語の意味が法律で明確になっています。

工事監理者
工事監理者とは、その者の責任において、工事を設計図面と照合し、それが設計図面通りに実施されているかどうかを確認する者をいう。
建築基準法第2条-電子政府の総合窓口(e-Gov)
建築士法第2条-電子政府の総合窓口(e-Gov)

なお、工事監理者は原則1級や2級などの建築士である必要があり、必ず工事に関与することになっています。(※)

※階数2以下かつ100㎡以下の木造建築物などは除く。

工事監理者は、法律で定められた、工事を図面通り行わせる専門家(建築士)ということになります。また、工事監理者は、工事監理の状況などについて施主(建築主)に報告する義務があり、現場の監視的な役割が期待されています。

それらを含め業務全体のイメージを見てみましょう。

■工事監理の業務

■工事監理者の大切な仕事

上図のように、工事監理者は、工事監理を行う際に以下のような重要な業務も併せて行うことが定められています。

・工事施工者が図面通りに行わなければ注意を与える
・注意に従わない場合は施主(建築主)に報告する
・工事監理が終了したら結果を文書で施主(建築主)に報告する
建築士法第18条、20条-電子政府の総合窓口(e-Gov)

まさに、工事監理者は、施工会社がミスを起こさないよう、施主(建築主)の代わりになって第三者的に現場を監視するという立場にいることがわかります。

■工事監理者はどこの会社に所属してもいい

工事管理者は、あくまでも施工会社に属する立場をさしますが、工事監理者は、所属に全くの縛りがありません。工事の規模・用途に応じた建築士の資格さえあればよいことになっています。

つまり、設計事務所に属しようが、ハウスメーカーに属しようが全くかまわないのです。

工事監理に伴う施主の責務

 

工事監理者は施主(建築主)と密接な関係にあります。施主の立場を明確に意識するためにも、工事監理において、施主(建築主)が行わなければならないことを説明します。

■工事監理者の選任

施主(建築主)は、自分の住宅を建てるとき、必ず工事監理者を選任しなければいけません。(※)
建築基準法第5条の4-電子政府の総合窓口(e-Gov)

※ 階数2以下かつ100㎡以下の木造建築物などは除く。

一般的には、ハウスメーカーから、その社員である建築士を工事監理者として選任する旨の説明を受け、それを了承する形で決まりますが、あくまでも、定める義務があるのは施主(建築主)となります。

■工事完了検査申請書の提出

施主(建築主)は住宅の工事が完了した場合は、建築基準法に適合しているかどうかを行政機関(指定確認検査機関)に検査してもらうため、完了検査申請書を提出します。(中間検査がある場合も同様です。)
建築基準法第7条-電子政府の総合窓口(e-Gov)

その際、工事監理者によって記載された「工事監理の状況」(第4面)とともに、施主(建築主)と工事監理者、両者の記名により提出します。

なお、実際の手続きは、委任先の建築会社が行いますが、あくまでも申請義務があるのは施主(建築主)となります。

 

■工事完了検査申請書(第一面)様式

■工事完了検査申請書(第四面)様式

まとめ 工事監理者とは

 

以上、工事監理者の役目などについてまとめます。

工事監理者の役割等
・工事監理者は建築士
・工事監理者は施主が選任する
・工事監理者は工事が図面通りかどうかを確認する
・工事監理者は工事が図面通りでなければ工事施工者に注意し、注意に従わない場合は施主(建築主)に報告する
・工事監理者は工事監理が終了したら施主に報告する
・施主は工事監理者の記名とともに工事完了検査申請書を提出する

そもそも工事施工者は、請負契約に基づいて図面通り工事を行う契約上の義務を負っていますが、さらに、法的義務として建築士がそれを確認することによって、施主の利益保護が図られる仕組みになっています。

このような専門家による現場の監視効果を前提とした住宅生産の仕組みは、消費者でもある施主にとって、非常に重要な役割を果たしていることがおわかりいただけるでしょう。

まずは、こうした仕組みが前提となってあなたの家が建てられているということを理解しておきましょう。