健康・医療
1-3.がん種別リスク要因と予防法
ここでは、がんの種類別に、それぞれのリスク要因と予防法について説明します。(公開日:2018年9月20日)
1.頭頸部(とうけいぶ)がん
1)口腔(こうくう)がん
【リスク要因】
舌や歯肉、ほほの内側、軟口蓋(なんこうがい)、硬口蓋(こうこうがい)など、口の中の粘膜にできるがんを口腔がんといいます。口腔がんの確立したリスク要因とされているのは、喫煙と飲酒です。特に喫煙は全口腔がんの原因の80%を占めており、たばこ対策により口腔がんが劇的に減少することが示されています。飲酒も、単独または喫煙と相まって確実に口腔がんのリスクを高めます。さらに、熱い飲み物や食べ物を摂(と)る習慣もおそらく確実にリスクを高くします。
ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)と口腔がんの関連を示す研究もあります。
【予防するために】
野菜や果物、中でも新鮮な果物の予防効果は、おそらく確実とされています。
これらの食物に豊富に含まれるビタミンC、E、β−カロテンなどの栄養素不足が口腔がんの発症に関わっていると考えられます。
2)上咽頭(じょういんとう)がん
【リスク要因】
咽頭がんの中でも上咽頭がんはまれながんですが、中国や台湾などの東南アジア地区で伝統的に食べられる塩蔵魚によって、リスクが高くなることが確実とされています。特に、乳児期から幼少時代の摂取はリスクの増大につながります。
喫煙、飲酒、熱い飲食物もリスクを高くすることが確実とされています。
また、ホルムアルデヒドの取り扱い作業との関連は、確立したリスク要因です。その他にEBウイルス (Epstein-Barr Virus:エプスタインバールウイルス)やHLAの多型についても関連が指摘されていますが、まだよくわかっていません。
「HLA」 とは
HLA(Human Leukocyte Antigen、ヒト白血球抗原)は1954年に白血球の血液型として発見されたものです。通常の血液型は赤血球の型を示していますが、HLAは白血球の型を示しています。
HLAが発見されてから研究が進むにつれて、HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していて、ヒトの免疫に関わる重要な分子(組織適合性抗原)として働いていることが明らかになりました。
3)中咽頭(ちゅういんとう)がん・下咽頭(かいんとう)がん
【リスク要因】
中咽頭・下咽頭がんのリスクは、喫煙と飲酒によって確実に高まります。熱い飲み物や食べ物も、中咽頭がん、下咽頭がんのリスクをほぼ確実に高くします。
中咽頭がんの発症については、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)との関連を示す研究もあります。
【予防するために】
野菜(でんぷんを含まないもの)や果物、食べ物の中に含まれるβ−カロテンなどの栄養素に予防効果がある可能性が示されています。
4)喉頭(こうとう)がん
【リスク要因】
喫煙および飲酒によって、確実に喉頭がんのリスクが高くなります。禁煙と飲酒はそれぞれが別々に、または相乗的に働いて、喉頭がん発生のリスクを確実に高くします。
また、アスベストなど職業によるリスク要因への曝露(ばくろ)も関係している可能性があります。
【予防するために】
野菜や果物の摂取により喉頭がんのリスクを下げられる可能性があるとされています。
5)鼻腔(びくう)・副鼻腔(ふくびくう)がん
多くのがんと異なり、喫煙・食物の影響は小さいとされています。一方、ニッケル、クロムなど金属などの取り扱い作業や、木材・革製品などの製造で材料のくずなどに曝露することとの関連が、確立したリスク要因とされています。
2.甲状腺がん
甲状腺は、のどぼとけのすぐ下に位置する器官で、代謝を促す甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺がんは女性に多く、また若年に比較的多く発生するという特徴があります。甲状腺がんは、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん(参考:分化度)に分類されます。日本人に最も多く見られるのは乳頭がんで甲状腺がんの85~90%を占めています。
甲状腺がんの確立されたリスク要因は、放射線被ばくのみとされています。また、甲状腺組織の発達に関連する甲状腺刺激ホルモン(Thyroid-Stimulating Hormone:TSH)の増加は、甲状腺がんのリスク要因ではないかと指摘されています。
さらに、組織型によってリスク要因がそれぞれ異なっています。
1)乳頭がん
成長期である乳幼児期は、放射線曝露の感受性が高く、この時期に頭頸部に放射線治療などを受けたことがある場合には、乳頭がんが発生する確率が上昇することがわかっています。また、TSH制御に不可欠であるヨードは、摂取過剰で乳頭がんのリスク要因になることが指摘されています。
「ヨード」とは
体に必要な栄養素であるミネラルのひとつで、甲状腺ホルモンを体の中でつくるための材料となります。ヨードを多く含む食品は海藻類で、特に昆布に多く含まれています。
2)濾胞がん
ヨードの摂取量不足が濾胞がんのリスク要因となることが報告されています。
3)髄様がん
甲状腺がんの遺伝要因は強くはないものの、髄様がんは多発性内分泌腫瘍症(たはつせいないぶんぴしゅようしょう)MEN2A/Bとして発生することや、家族性が強いことが報告されています。
「多発性内分泌腫瘍症」とは
多発性内分泌腫瘍症(Multiple Endocrine Neoplasia:MEN) は主に内分泌臓器(ホルモンをつくる臓器)が冒される病気です。
その臨床像からMEN1型、MEN2型に分かれており、さらにMEN2型はMEN2A、MEN2B、家族性甲状腺髄様がん、の3型に分けられます。
特にMEN2型は甲状腺にできるがんの原因になることが知られています。
3.食道がん
【リスク要因】
食道がんについては、喫煙と飲酒、肥満(腺がん)が確立したリスク要因とされています。特に日本人に多い扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんでは、喫煙と飲酒の関連が強く、お酒を飲みながらたばこを吸うと食道がんのリスクがより高まることも指摘されています。逆に喫煙や飲酒の習慣がない人が食道がんになることは、ほとんどありません。
また、熱い飲み物や食べ物がリスクを上昇させるという研究結果も多く報告されています。熱いマテ茶を飲む習慣がある南ブラジルやウルグアイでは、食道がんが多くみられます。日本をはじめ中国や香港からも、熱い飲食物が食道粘膜の炎症を通して食道がんのリスクを上げるという報告が複数あります。熱いものを飲んだり食べたりする食習慣が、おそらく確実なリスク要因でしょう。
欧米人に多い食道腺がんでは、食べ物や胃液などが胃から食道に逆流する「胃食道逆流症」に加え、肥満で確実にリスクが高くなるとされています。
食道がんにかかる方は咽頭(いんとう)や口、喉頭(こうとう)などにもがんができやすく、咽頭や口、喉頭などのがんにかかった方は食道にもがんが発生しやすいことがわかってきています。これは、これらのがんの原因が共通して飲酒や喫煙になるためだと考えられています。
「胃食道逆流症」とは
胃の噴門部がなんらかの原因で弱くなり、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流する病態です。症状として胸やけ、げっぷなどが現れます。肥満の人は、腹圧が高くなるので食道への逆流が起こりやすくなります。
この胃食道逆流症の合併症として、「バレット食道」といわれるものが知られています。胃酸が何度も逆流するため、食道の粘膜が胃に近い粘膜に置き換えられてしまったり、食道腺がんに変化する細胞に置き換わったりする状態のことをいいます。このバレット食道は食道腺がんの前がん状態(がんになる前ぶれ)と考えられています。
【予防するために】
喫煙者はまず禁煙しましょう。飲酒も適量を心掛け、熱い飲食物は覚ましてから口にしましょう。
野菜(でんぷん質のもの除く)や果物、βカロテンやビタミンCを含む食品の摂取がおそらく確実な予防要因とされていますので、積極的に摂(と)るようにしましょう。
4.胃がん
【リスク要因】
日本は世界的に見て非常に胃がんが多く発生する国です。近年新たに胃がんにかかる人は減ってきていますが、高塩分の食品(漬物、みそ汁、魚の干物など)が多く食卓にのぼる秋田県、山形県、新潟県など日本海側に多く発生します。これらの地域の胃がん発生率を塩分摂取量の少ない九州・沖縄と比べると、約3倍も高くなっています。実際に、食塩および高塩分食品については、胃がんのリスクを高めるとする疫学研究(えきがくけんきゅう)、またそれを支持する動物実験研究も多く、おそらく確実に胃がんのリスクを上げる要因だとされています。
また、喫煙が胃がんのリスクを高めることも多くのコホート研究で一致して示され、確立したリスク要因とされています。日本人の場合、喫煙者は非喫煙者に比べて胃がんのリスクが1.6倍程度高くなります。
飲酒については、日本では全ての胃がんの発生と飲酒の関連を示す根拠は十分ではありませんが、噴門部(ふんもんぶ:胃の入り口で食道につながっている部分)にできるがんのリスクが上昇するとの報告があります。
多くの疫学研究や動物実験などにより、胃粘膜にすみつく細菌として知られるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori) の持続感染は、確立した胃がんのリスク要因とされています。胃の部位別にみると、非噴門部がんでピロリ菌との関連が噴門部がんより強いことが示されていますが、胃がんの組織型によるリスクの違いはみられないことが、多くの研究の一致した結果です。
【予防するために】
喫煙者は、まず禁煙しましょう。食事は高塩分の食品を控え、減塩を心掛けましょう。
野菜(でんぷん質を除く)や果物の摂取が、おそらく確実な予防要因とされています。果物が不足しないようにすることが勧められます。
ほかに、豆類、セレンを含む食品などについて、胃がんの予防要因候補とする研究結果が蓄積されつつありますが、まだはっきりとした結論は出ていません。近年、緑茶については、喫煙などほかのリスク要因を持たない女性の胃がんリスクを、大きくはないが減らす効果がある可能性が示されています。
ピロリ菌の持続感染は胃がんのリスク要因になるため、ピロリ菌を持っている人は定期的に胃がん検診を受けることをお勧めします。
5.大腸(結腸、直腸)がん
大腸がんは、がんが発生する部位によって、結腸がんと直腸がんに分けられます。
【リスク要因】
大腸がんでは、別の部位のがんにあまり見られない特徴として、家族歴(親やきょうだいなど直系の親族に大腸の人がいること)がリスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう)と遺伝性非ポリポーシス性大腸がんの家系は、確立した大腸がんのリスク要因とされています。
生活習慣では、肥満、高身長などの体格で結腸がんのリスクが高くなることが確実とされています。また食生活では、飲酒(男性)や赤肉(牛・豚・羊の肉)、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)が確実な大腸がんリスクとされています。女性の飲酒はおそらく確実なリスク要因です。
その他、ヘテロサイクリックアミン(肉や魚を強火で調理した時に焦げた部分にできる発がん物質)やニトロサミン(食べ合わせにより体内で生成される発がん物質)などが大腸がんのリスク要因といわれていますが、ヒトにおける根拠は限定的または不十分とされています。
喫煙については、世界中の疫学研究の成果をまとめた国際がん研究機構(IARC)の2009年の評価により、大腸がんの確実なリスク要因とされています。
「家族性大腸腺腫症」とは
大腸全体に100個以上のポリープが発生する遺伝性疾患です。たくさんできたポリープを放置すると、一部が20〜30歳代でがん化すると考えられるため、予防のために手術が必要となる場合があります。
「遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(HNPC)」とは
消化管にポリープができない家族性大腸がんです。大腸がんだけでなく胃がん、子宮体がん、腎盂(じんう)がん、小腸がんなどが発生することもあります。これらのがんが家系の中で3人以上発生していて、患者同士の血縁関係が近い場合にはこの病気の可能性が高いと考えられます。
【予防するために】
大腸がんのリスクを下げる要因としては、運動による予防効果が確実とされています。特にデスクワークなどで運動不足になりがちな人は、日常の中で体を動かす習慣をつけましょう。また、食物繊維を含む食品の評価は変動がありましたが、近年確実な予防要因と位置づけられました。にんにく、牛乳、カルシウムはおそらく確実な予防要因です。
その他、可能性あり、またはエビデンス不十分な予防要因として、葉酸(ようさん)、ビタミンD、野菜(でんぷん質を含まない)、果物、セレン、魚などが挙げられていますが、確実との判定には至っていません。
また、非ステロイド系消炎鎮痛剤 (NSAIDs、アスピリンを含む)と、閉経期の更年期症状によく用いられるホルモン補充療法が、リスクを減少させる要因として挙げられています。ただし、薬剤をがんの予防に用いる場合には、リスクとベネフィットのバランスを考える必要があります。
大腸がんは早期発見による治癒率が高く、便潜血検査を中心とした大腸がん検診を受けることで死亡率が低下することが示されています。40歳を過ぎたら大腸がん検診を年1回受けることが勧められます。
6.肝臓がん
【リスク要因】
肝臓がんの約9割を占める肝細胞がんの最も重要な要因は、肝炎ウイルスの持続感染です。ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生が繰り返され、遺伝子の突然変異が積み重なることが、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられています。日本では、肝細胞がんの90%以上が C型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスの持続感染によるものと試算されています。
肝臓がんの最も重要なリスク要因は肝炎ウイルス感染ですが、これ以外のリスク要因としては、喫煙、アフラトキシン(食事に混入するカビ毒)が確実とされています。また、飲酒はおそらく確実なリスク因子です。ほかに、肥満、糖尿病、運動不足もリスク要因であろうとのエビデンスが多数報告されています。
また、日本では少ないですが、タイ北東部などで高率に発生する胆管細胞がん(肝内胆管がん)については、淡水魚の生食習慣が感染源であるタイ肝吸虫(Opisthorchis Viverrini)やその他の肝吸虫の持続感染が、発生要因として知られています。
【予防のために】
日本の肝がんの予防としては、肝炎ウイルス感染予防と、肝炎ウイルスの持続感染者に対する肝がん発生予防が中心となっています。
まず肝炎ウイルス感染の有無を知ること、そして感染が確認された場合には肝臓の専門医を受診して、相談することが重要です。
C型、B型の肝炎ウイルスは、日常生活で感染することはまずありません。しかし、C型肝炎ウイルスが発見され検査法が普及したのは、1990年代以降でした。それ以前は注射や輸血などの医療行為を介して感染しているおそれがあります。現在多くの自治体で肝炎の無料検査を行っていますので、40歳以上の人は自覚症状がなくても一度は肝炎ウイルスの検査を受けてください。
肝炎ウイルス感染が判明した場合、特に禁煙と節酒を心掛けることが重要です。肥満や運動不足の解消や、血糖コントロールも有効だと考えられます。
なお、現在日本では医療行為によって肝炎ウイルスに感染することはまずありません。新たな感染を防ぐには、性行為の際にはコンドームを使用すること、歯ブラシ、カミソリなど他人の血がついている可能性のあるものは共有しないことなどの注意が必要です。
7.胆道(胆嚢:たんのう、胆管:たんかん)がん
胆道(胆嚢、胆管)がんは発生率が低いために、研究が限られていて原因がはっきり解明されていません。その中で、胆石や胆嚢・胆管炎、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)、クローン病、原発性硬化性胆管炎、膵胆管合流異常症(すいたんかんごうりゅういじょうしょう)などの胆道系疾患にかかったことがある場合、胆嚢がんのリスクが上昇することが知られています。そして、胆嚢摘出術などによる治療は、胆道がんのリスクを低下させるという報告もあります。
その他、女性であること、肥満や高脂肪食、野菜や果物の摂取不足、出産回数が多いことなどがリスク要因の候補として挙げられています。
「潰瘍性大腸炎」とは
大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、粘膜がただれたり潰瘍ができる病気で、発生原因は明らかになっていません。
「クローン病」とは
消化管に慢性の炎症が生じる原因不明の病気で、消化管(口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門まで)のどの部位にも生じます。
「原発性硬化性胆管炎」とは
胆汁の通り道である胆管が細くなって胆汁の流れが悪くなり、最終的には肝硬変、肝不全になる病気です。
「膵管胆道合流異常」とは
先天的に膵管と胆道の接続部分の合流に異常がある状態。通常、胆管と膵管は十二指腸の壁内で合流して1本の管になりますが、膵管胆道合流異常の場合は膵管と胆管が十二指腸の壁外で合流する先天性の奇形です。膵液(すいえき)が胆道に、胆汁が膵管に逆流するため、炎症をはじめさまざまな病気を引き起こす原因になります。胆道がんは、胆道が長年にわたって膵液によって傷害されることで発生すると考えられます。
8.膵臓(すいぞう)がん
膵臓がんは、発生率が低かったことなどの理由で研究が限られており、はっきり原因がわかっていません。膵臓がんのリスク要因として現在確立されているのは、喫煙および肥満だけです。成人期における高身長、20歳までの体格指数(BMI)など、若年期の高成長に関わる因子はおそらく確実なリスク要因です。
その他、糖尿病の罹患(りかん)や大量飲酒に伴う慢性膵炎(すいえん)によってリスクが上がるという報告がありますが、さらに研究が進んだ段階で結論を出す必要があります。
9.肺がん
【リスク要因】
肺がんの最大のリスク要因は、喫煙習慣です。たばこの煙には多数の発がん物質が含まれており、喫煙によって肺がんリスクが上昇することは、数多くの研究で一致した結果として確認されています。
欧米では、喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者の20倍以上とされていますが、日本人を対象とした研究(2008年)では、喫煙者の肺がんリスクは男性で4.8倍、女性で3.9倍という結果でした。また、組織型別では、扁平(へんぺい)上皮がんについては男性12倍、女性11倍であるのに対し、腺がんについては男性2.3倍、女性1.4倍と 大きな違いが示されています。欧米では、たばこが肺がんの発生原因の90%とされていますが、日本では男性で69%、女性では20%程度と推計されています。
また、受動喫煙によって肺がんのリスクが高くなるという科学的根拠は十分あると評価されています。受動喫煙者は、受動喫煙がない者に比べて20~30%程度高くなると推計されています。日本人で欧米に比べて喫煙の相対リスクが低くなっていますが、その原因のひとつとして非喫煙者でも受動喫煙の影響によってリスクが上がっていることが、特に女性において考えられます。
また、喫煙による発がんリスクの大きさは、同じたばこを吸う人でも遺伝子素因で変わる可能性が指摘されました。ほかに遺伝的素因として、発がん物質の代謝経路(たいしゃけいろ)にある酵素の活性などを決める遺伝子多型が、いくつか候補に挙げられています。遺伝子関連の研究はまだ初期の段階にあり、根拠としては不十分です。
環境要因として、飲料水中のヒ素は確実なリスク要因です。その他、アスベスト、シリカ、クロム、コールタール、放射線、ディーゼル排ガスなどへの職業や一般環境での曝露(ばくろ)、さらに、石炭ストーブの燃焼や不純物の混ざった植物油の高温調理により生じる煙(中国の一部地域)、ラドンなどによる室内環境汚染も、肺がんのリスク要因とする根拠は十分とされています。
肺がんのリスクを低下させる栄養素としてβ−カロテンが最も注目されましたが、欧米で喫煙者などハイリスク・グループを対象にして行われた2つのランダム化比較試験により、β−カロテンを多く摂取(1日20〜30mg)すると、肺がんリスクがかえって20~30%程度高くなるという結果になりました。このため、喫煙者がサプリメントなどの服用により高用量 のβ−カロテンを摂取することは肺がんリスクを高くする確実な要因とされています。
「遺伝子多型」とは
同じ人間、同じ人種であっても、遺伝子の塩基配列には人によって異なるいくつかのタイプがあります。特に人口の1%以上の頻度で存在する遺伝子の変異を遺伝子多型と呼んでいます。 遺伝子の多型によって、つくられるたんぱく質の機能に違いを生じ、発がんリスクに差が生じる可能性があると考えられています。
【予防するために】
肺がんの最大の予防は、たばこを吸わないことです。たばこの発がん物質は、血液に乗ってさまざまな臓器に影響を与えるため、禁煙することによって肺だけでなくさまざまな部位に発生するがんのリスクを下げることができます。
また、受動喫煙も肺に対して発がん性があることが確実とされています。たばこを吸わない人は、できるだけたばこの煙を避けましょう。予防には果物やカロテノイドを含む食品がおそらく確実とされていますが、β−カロテンについては上述の注意が必要です。
10.胸膜(きょうまく)および腹膜中皮腫(ふくまくちゅうひしゅ)
胸膜よび腹膜中皮腫は、そのほとんどがアスベスト(石綿)の吸引により発生します。アスベスト鉱山労働者やアスベストを扱う労働者に限らず、鉱山や工場周辺の住民、あるいは、労働者の家族にも発生しています。曝露(ばくろ)が多いほど、また曝露歴が長いほど、リスクが高くなります。アスベストに曝露してから中皮腫が発生するまでの期間が長いのが特徴で、最短で20年前後、平均で40年程度かかります。アモサイト(茶石綿)やクロシドライト(青石綿)などのアンフィボール系のアスベストでリスクが高くなります。胸膜中皮腫は全てのアスベストが原因となる一方、腹膜中皮腫は、クリソタイル(白石綿)では起こりにくいことが知られています。
詳細に調べれば、中皮腫患者さんのほとんどは過去になんらかのアスベスト曝露歴がありますが、特に女性では、明らかな曝露歴が見当たらない場合もあります。 喫煙によってアスベストによる肺がんリスクは強められますが、中皮腫のリスクが強められることはないものと考えられています。
11.乳がん
【リスク要因】
乳がんの発生、増殖には、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが重要な働きをしています。これまでに確立されたリスク要因は、体内のホルモンレベルに影響を与えるものがほとんどです。生理的な要因としては、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、妊娠・出産経験がない、初産年齢が遅い(高齢出産)、授乳歴がないことなど、長期間エストロゲンにさらされることがリスク要因とされています。
また、体外からホルモンレベルを上げる要因として、経口避妊薬(ピル)の使用や閉経後のホルモン補充療法などによって乳がんのリスクが高くなることは確実とされています。
体格では高身長、閉経後の肥満が確立したリスク要因ですが、閉経前乳がんについては、逆に肥満者でリスクが低くなる可能性が高いとされています。
日常生活では、飲酒習慣により乳がんリスクが高くなることは確実とされています。
その他、一親等(自分の母親または子)の乳がんの家族歴、良性乳腺疾患の既往、マンモグラフィ上の高密度所見、電離放射線への曝露(ばくろ)も、乳がんの確立したリスク要因とされています。
「女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)」とは
卵巣から分泌される女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。女性ホルモンは月経周期に応じて濃度が変化します。一生のうちの月経回数が多いほど、エストロゲンの影響を受けやすくなります。
エストロゲンは、乳がんを発生させるだけでなく、成長させていく要因と見られています。
【予防するために】
授乳は閉経前・後の乳がんの確実な予防因子です。運動による乳がん予防効果はおそらく確実(閉経後)とされています。日常生活を送る上で運動を心掛け、リスク要因とされるアルコールの過剰摂取を控えましょう。
その他の食事や栄養素に関しては、脂質がリスク要因として、野菜、果物、食物繊維、イソフラボンなどが予防要因として注目されていますが、現時点で十分に根拠がそろっているものはありません。
12.子宮がん
1)子宮頸(けい)がん
【リスク要因】
性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)の感染が、子宮頸がん、特に扁平上皮がんの確立したリスク要因とされています。子宮頸がん患者の90%以上からHPVが検出されます。HPVには100以上のタイプがありますが、中でもハイリスク・タイプと呼ばれ子宮頸がんの発生と関係が強いHPV16型やHPV18型などで、浸潤(しんじゅん)がんへ進展しやすいことがわかっています。
子宮頸がんのリスク要因として、低年齢での性体験、性的パートナーが多い、多産、HPV以外の性行為感染症に感染していること、などが報告されていますが、その多くはHPV感染のリスク要因と共通しています。また、喫煙も確立したリスク要因とされています。その他、経口避妊薬の使用、低所得階層との関連性も指摘されています。子宮頸部腺がんについても、扁平上皮がんと同様にHPV感染や経口避妊薬の使用との関連が指摘されています。
【予防するために】
定期的に子宮がん検診を受ける、禁煙するなどの配慮が必要です。
2)子宮体がん
子宮体がんは、エストロゲンによって増殖するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。リスク要因として、閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満、腫瘍からエストロゲン産生が見られることなどが確立したものとされています。薬剤では、乳がんのホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、更年期障害などに対するホルモン補充療法などで用いられるエストロゲン製剤の単独使用などが挙げられます。
これらのリスク要因は、いずれも体内のエストロゲンを高めるものです。逆に、プロゲステロンは予防的に働くことが知られています。
その他のリスク要因として、糖尿病、高血圧、乳がんや大腸がんの家族歴との関連が指摘されています。
予防因子としては身体活動がおそらく確実な要因です。
3)外陰がん
外陰がんはHPV感染が重要なリスク要因ですが、それ以外では硬化性苔癬(こうかせいたいせん:外陰部が白く硬くなり、痛みやかゆみをともなう疾患)が関係しているとされています。膣(ちつ)がんは、子宮頸がんに連続する病変である場合が多く、HPV関連疾患として、子宮頸がんと共通のリスク要因によると考えられます。
4)膣(ちつ)がん
膣がんは、子宮頸がんに連続する病変である場合が多く、HPV関連疾患として、子宮頸がんと共通のリスク要因によると考えられます。
5)絨毛(じゅうもう)がん
絨毛がんの最大の確立したリスク要因は、胞状奇胎(ほうじょうきたい)です。正常妊娠と比較した場合、全胞状奇胎の絨毛がんリスクは1000倍以上高くなります。
「胞状奇胎」とは
精子と卵が受精をしてから2週間以上経過すると、受精卵は子宮内へ到達し子宮内膜に着床します。この時、受精卵は胎児へ発生する「胎芽(たいが)」部分と、胎盤へ発生する「絨毛」とに分かれています。
絨毛は細かい毛のような組織で、胎芽部分(=胎児)とは臍帯(さいたい)を通じてつながっており、木の根を伸ばすように子宮内膜内へ伸びていって、母胎側から栄養分や酸素を吸収する働きを持っています。まれにこの絨毛部分だけが異常増殖を起こすことがあり、これが顕著になると子宮内側の空間が異常増殖した絨毛組織だけで占領されてしまいます。これを胞状奇胎と呼びます。
異常増殖して水疱(すいほう)状になった絨毛は、ブドウの房状に見えるので別名「ブドウ子」と呼ばれます。
13.卵巣・卵管がん
卵巣がんの組織型(顕微鏡で検査した場合の分類)は多様で、その発生も単一のメカニズムでは説明できません。このため、卵巣がんの発生と強い関連性を示す単一の要因はありません。卵巣がんの発生には、複数の要因が関与していると考えられています。
卵巣がんの確立したリスク要因は、卵巣がんの家族歴のみとされています。大部分の卵巣がんは散発性ですが、一部は遺伝に関係しており、乳がんと同じくBRCA1、BRCA2遺伝子の変異が知られています。おそらく確実な要因としては成人期の高身長が挙げられます。一部の組織型では喫煙が関連することも最近わかりました。
ほかにリスク要因として、出産歴がないことが指摘されています。また、経口避妊薬(ピル)を一定期間使用することは、卵巣がんのリスクを低下させます。
婦人科疾患では、骨盤内炎症性疾患、多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群、子宮内膜症がリスク要因として指摘されています。その他、可能性のあるリスク要因として、肥満、動物性脂肪の多量摂取、排卵誘発剤の使用、更年期障害などに対するホルモン補充療法などが挙げられます。
卵管がんについて確立した要因はありませんが、卵巣がんと同様の要因が関連していると考えられています。
「骨盤内炎症性疾患」とは
卵巣・卵管炎、骨盤腹膜炎など、女性生殖器の上方の部位に起こる感染症です。その多くは膣に入った細菌によって引き起こされます。
原因として最も多いのは、クラミジアなどの性感染症です。
「多嚢胞性卵巣症候群」とは
卵巣の中に卵胞がたくさんできても、卵胞が育たず排卵が十分にできなくなる症状で、不妊症の原因のひとつです。
「子宮内膜症」とは
子宮の内側を覆っている子宮内膜、またはそれとよく似た組織が、子宮の内側以外に発生してしまう病気です。
14.前立腺がん
前立腺がんは、65歳以上から増えてきて、加齢に従って発生率が高くなります。もともと欧米諸国に多く見られるがんです。米国の黒色人種にもとも多くみられ、次に白色人種が多いといわれています。日本を含むアジアでは前立腺がんは少ないといわれていましたが、近年では日本でも増加してきています。
前立腺がんの確立したリスク要因は、年齢(高齢者)、人種(黒人)、前立腺がんの家族歴とされています。動物実験などから、男性ホルモンのアンドロゲンが前立腺がんの発生に重要な役割を果たしているのではないかと考えられてきましたが、現在のところ、疫学研究ではこの仮説に一致する結果は得られていません。最近では、細胞増殖に関わるたんぱく質の一種IGF-1によってリスクが高くなる可能性が指摘されています。
食事、栄養素に関しては、リスク要因として食事由来のカルシウムが、予防要因として食事に含まれるカロテノイド(中でもリコペン)、セレンなどが関与している可能性が示されています。その他喫煙、体格、アルコール、身体活動についても、関連の可能性が探られていますが、関連はないとする研究が多い状況です。
15.精巣腫瘍(せいそうしゅよう)
精巣腫瘍の確立したリスク要因は、停留精巣(誕生時に陰嚢(いんのう)の中に精巣が入っていない異常)の既往とされています。停留精巣を持つ男性の精巣腫瘍リスクは、そうでない男性の2.5~11.4倍と報告されています。ホルモン要因と遺伝要因も重要な原因と考えられ、胎児期のエストロゲン曝露(ばくろ)、精巣腫瘍の家族歴も、リスク要因の候補として挙げられています。また、後天性免疫不全症候群(AIDS)、耳下腺睾丸炎(じかせんこうがんえん:おたふくかぜにより引き起こされる睾丸炎)、EB(Epstein-Barr)ウイルスなどの感染症で精巣腫瘍のリスクが高くなることから、免疫系もリスク要因である可能性が指摘されています。
16.陰茎(いんけい)がん
陰茎がんは、新生児期に包皮切除を行う習慣のある地域では発生率が低いことから、包茎(ほうけい)、亀頭包皮炎(きとうほうひえん)、生殖器の不衛生がリスク要因ではないかと考えられています。梅毒や尖圭(せんけい)コンジロームなどの性感染症や、性的パートナーが多いこと、また、陰茎がんの男性を夫に持つ女性では子宮頸がんのリスクが高くなることから、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)感染もリスク要因の候補に挙げられています。その他、乾癬(かんせん)患者さんが光化学療法PUVA(光に対する感受性を上げる物質ソラレン(8-methoxypsoralen)と長波紫外線(UV-A)の併用療法)を受けている場合リスクが上昇することが報告されていて、紫外線もリスク要因となる可能性が指摘されています。
17.腎(じん)細胞がん
【リスク要因】
腎細胞がんは、尿をつくる尿細管細胞から発生するがんです。50歳代から70歳代で発生することが多く、女性よりも男性に多く見られます。
腎細胞がんの確立されたリスク要因は、喫煙と肥満とされています。その他、高血圧、降圧薬服用、利尿剤服用(特に女性)、フェナセチン含有鎮痛剤がリスク要因の候補に挙げられています。ほかに、膀胱(ぼうこう)がんほど強い関連ではありませんが、アスベストやドライクリーニング従事者によるテトラクロロエチレン曝露(ばくろ)など、職業性曝露が可能性のあるリスク要因として指摘されています。
基礎疾患としては、フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau、VHL)病や結節硬化症、多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)がリスク要因とされています。
腎細胞がんは発生しやすい家系があることもわかっています。遺伝子の解析により、その家系が持っている遺伝子異常を見つけられれば発病前から腎がんになるかどうかの予測ができます。
「フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau、VHL)病」とは
遺伝子の異常により起こる病気で、血管が豊富な臓器において、血管の異常な増殖を起こします。小脳血管芽腫(しょうのうけっかんがしゅ)、網膜血管腫(もうまくけっかんしゅ)、腎細胞がんを含め、膵臓、肝臓、肺などに多発性の腫瘍を発症します。
「結節性硬化症(プリングル病)」とは
てんかん発作、知的障害、皮膚症状の3つを主な症状とする先天的な病気です。全身性の疾患で、皮膚、神経系、腎、肺、骨など全身のいろいろなところに過誤腫と呼ばれる良性の腫瘍ができます。
「多発性嚢胞腎」とは
腎臓に、多数の嚢胞(のうほう:水がたまった袋)がたくさんできて、腎臓の働きが徐々に低下していく遺伝性の病気です。
【予防するために】
喫煙は確立したリスク要因なので、まず禁煙することが重要です。また過度の肥満の人は減量が必要です。
18.尿路上皮(にょうろじょうひ)がん
腎臓でつくられた尿は、腎盂(じんう)に集まり、尿管を流れて膀胱(ぼうこう)に入ります。腎盂、尿管、膀胱の内側は移行上皮という粘膜で覆われています。この粘膜から発生した悪性腫瘍を総称して尿路上皮がんといいます。これらは同じ性質を持っているため、それぞれ単独で発生することもあれば、同時に複数の部位で発生することもあります。
1)膀胱がん
【リスク要因】
尿路上皮がんの中で膀胱がんが最も多くみられます。男女とも60歳以上から罹患率が高くなり、約4対1の割合で男性に多いがんです。
膀胱がんの確立されたリスク要因は喫煙です。男性の70%以上の膀胱がんは喫煙のために発生することが示されています。
また、染料を使う工場や化学工場。ゴム工場、薬品工場などで扱われることの多い化学物質(ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルなど)の職業性曝露(ばくろ)も確立したリスク要因とされています。
その他、リスク要因の候補として、フェナセチン含有鎮痛剤、シクロホスファミド(抗がん剤のひとつ)、コーヒー、塩素消毒した飲料水が挙げられていますが、疫学研究では一致した結果は得られていません。
【予防するために】
膀胱がんの予防には、禁煙することが最も重要です。
2)腎盂・尿管がん
【リスク要因】
腎盂・尿管がんは、50歳代から70歳代で、最も発生しやすく、2対1で男性に多くみられます。腎盂・尿管がんについては、喫煙とフェナセチン含有鎮痛剤が、確立されたリスク要因とされています。
その他、高血圧、飲料水中のヒ素、膀胱がんと同じような職業性曝露がリスク要因として報告されています。
【予防するために】
腎盂・尿管がんの予防には、膀胱がんと同様禁煙することが最も重要です。
19.「がん種別リスク要因と予防法」主要参考文献
1)Stewart BW and Kleihues, eds. World cancer report, IARC Press, Lyon (2003)
2)Schottenfeld D and Fraumeni JF, eds. Cancer Epidemiology and Prevention, Second Edition, Oxford University Press, New York - Oxford (1996)
3)Adami HO, Hunter D, Trichopoulos D, eds. Text book of Cancer Epidemiology, Oxford University Press, New York -Oxford (2002)
4)World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity and the Prevention of Cancer: a Global Perspective. AICR, Washington DC (2007)
5)A Review of Human Carcinogens: Chemical Agents and Related Occupations, IARC Monographs Volume 100 - Part F (2012)
6)A Review of Human Carcinogens: Personal Habits and Indoor Combustions, IARC Monographs Volume 100 - Part E (2012)
7)A Review of Human Carcinogens: Radiation, IARC Monographs Volume 100 - Part D (2012)
8)A Review of Human Carcinogens: Metals, Arsenic, Fibres and Dusts, IARC Monographs Volume 100 - Part C (2012)
9)A Review of Human Carcinogens: Biological Agents, IARC Monographs Volume 100 - Part B (2012)
10)A Review of Human Carcinogens: Pharmaceuticals, IARC Monographs Volume 100 - Part A (2012)
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編集・脚本 チームコンシェルジュ
<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター
がん情報サービス