健康・医療
2-2.部位別がん検診の実際・胃がん検診

男女ともに、50歳※以上は2年に1回※、胃がん検診を受けましょう。
※胃部エックス線検査については、当面の間、40歳以上の方へ、年1回実施しても差し支えがないとされています。(公開日:2018年9月20日)

1.胃がん検診の方法

胃の検査方法として一般的なものは、「胃部エックス線検査」、「胃内視鏡検査」、「ペプシノゲン検査」、「ヘリコバクターピロリ抗体検査」です。
この中で胃がん検診の方法として、“効果がある”と判定されている検査は、「胃部エックス線検査」および「胃内視鏡検査」です。50歳以上の方は2年に1回、このいずれかを受けることが推奨されています。
なお、「ペプシノゲン検査」、「ヘリコバクターピロリ抗体検査」は“効果不明”と判定されています。

1)胃部エックス線検査(“効果あり”=○)

「胃部エックス線検査」は、バリウム(造影剤)と発泡剤(胃を膨らませる薬)を飲み、胃の中の粘膜を観察する検査です。胃がんを見つけることが目的ですが、良性の病気である潰瘍(かいよう)やポリープも発見されます。検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は、おおむね85%程度です。検査当日は朝食が食べられないなど、検査を受ける際の注意事項があります。副作用としては、検査後の便秘やバリウムの誤飲などがあります。
「胃部エックス線検査」は、50歳以上の方が受けることが推奨されています※。検査を受けるにあたっては、事前に、担当医より検査の内容や不利益について十分な説明を受けてください。
※胃部エックス線検査については、当面の間、40歳以上の方は、年1回受けても差し支えがないとされています。

 

2)胃内視鏡検査(“効果あり”=○)

胃の中を内視鏡で直接観察する検査です。内視鏡を口から挿入するため、検査の準備として鎮痙剤(ちんけいざい:胃の動きを抑える注射)やのどの麻酔が必要です。「胃内視鏡検査」は胃の中の小さな病変を見つけることが可能で、「胃部エックス線検査」でがんなどが疑われた場合の精密検査としても用いられます。ただし、まれに注射や麻酔によるショック、出血や穿孔(せんこう:胃の粘膜に穴を開けてしまうこと)といった医療事故の危険があります。
「胃内視鏡検査」は、50歳以上の方が2~3年に1回受けることが推奨されています。検査を受ける前には、担当医から検査の準備と内容、不利益について十分な説明を受けてください。

 

3)ペプシノゲン検査(“効果不明”=△)

血液検査によって、胃粘膜の老化度(萎縮度:いしゅくど)を調べます。胃がんを直接見つけるための検査ではありませんが、一部の胃がんは萎縮の進んだ粘膜から発生することがあるため、この検査で胃がんが見つかることがあります。陽性と判定された場合は、胃がんになる可能性があるので、定期的な検診を受けることが望ましいといえます。

 

4)ヘリコバクターピロリ抗体検査(“効果不明”=△)

血液検査によって、ヘリコバクターピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。ヘリコバクターピロリ菌は、胃がんの原因となりうる細菌ですが、感染した人がすべて胃がんになるわけではありません。ヘリコバクターピロリ菌が原因となる胃がんは、小児期にヘリコバクターピロリ菌に感染し、高齢化してから発症しますが、その数はごく少数です。ヘリコバクターピロリ菌の感染率は各年代で減少傾向にあり、特に40歳代以下の感染率は極めて低い(20%以下)です。この検査では感染しているかどうかはわかりますが、胃がんの診断はできません。

 

5)ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査の併用法(“効果不明”=△)

ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査との組み合わせにより、胃がんの発生リスクを分類する方法です(いわゆるABC検診)。胃がんになる確率の高いハイリスク・グループを選別できることが分かっています。この検診法は死亡率低減のエビデンスが確立されておらず、この方法を用いた具体的な検診プログラムも不明です。

2.胃がん検診の精密検査

胃部エックス線検査では、約10%の人が「精密検査が必要」という判定を受けます。この場合、必ず精密検査を受けることが求められます。精密検査の方法はエックス線検査によることもありますが、現在はほぼ内視鏡検査によって行います。

3.胃がん検診の結果を受けて、次回の検診は

[検査で異常なしの場合]

50歳以上の方は、2年に1回、「胃部エックス線検査」または「胃内視鏡検査」による胃がん検診を受けましょう※。
※胃部エックス線検査については、当面の間、40歳以上の方は、年1回受けても差し支えがないとされています。


[精密検査でがん以外の病気が指摘された場合]

治療が必要か、経過観察が必要かを、担当医と相談してください。
治療や経過観察が必要な場合には次回のがん検診は不要ですが、担当医の指示に従って、必要な検査を受けてください。

4.参考文献

1.厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」
2.国立がん研究センターがん予防・検診研究センター;有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版
3.平成16年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班;有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
4.平成18年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班;有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン
5.平成20年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班 平成21年度厚生労働省がん研究助成金「「がん検診の評価とあり方に関する研究」班;有効性評価に基づく子宮頸がんガイドライン
6.国立がん研究センターがん予防・検診研究センター;有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年度版

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター
 がん情報サービス